−ふるさとの伝統− 上富田町の民俗芸能 

      トップ> 上富田町文化財教室シリーズ


 生馬の扇踊り

 生馬の鳥淵地区より以東、芦山・篠原地区までの人々によって、古くから伝えられてきた踊りで、踊り手は、すべて日の丸のついた白扇を持って踊ります。

 踊りの種類は、しょうがい踊り・扇踊り・いそさい踊り・だいもんじゃ踊り・念仏踊りの5種目で、音頭には、いそさい音頭・念仏音頭(ナムアミダブツ、地蔵和讃)があります。口説(くどき)は、那須の与一・新徳丸・鈴木主水・おひろくどき・佐々屋半兵衛・おすまくどきが演じられます。

 この踊りは、盆の行事として踊り継がれてきましたが、大正年間は一時中断し、その後、しだいに復活して今日まで継承されています。古くは新盆の家々を巡回して踊り、また、日照りがつづいたときは、雨乞いのためにも踊ったと言います。囃は鉦と太鼓で、音頭取りの唄で踊るのは、一般の盆踊りと変りありません。

 こうした踊りは、昔は広く各地で行われていましたが、昭和30年代に入り時代の波に押し流されて新曲が取って替り、ほとんど消滅してしまいましたが、幸いに生馬の奥地に今日まで受けつがれてきました。

 現在、紀南地方にも、これらの踊りがいくつか残されています。しかし、土地ごとに多少の違いがみられるのは、伝統芸能の宿命といえましょう。その中で生馬に継承されたこれらの扇踊りは、よく古風を維持しているといえます。

 扇踊り (1) 

扇踊り (1)  
扇踊り (2)

 扇踊り (2)

●指定種別

●所在地

●指定年月日

 町指定無形文化財

上富田町生馬(生馬扇踊り保存会)

昭和51年7月15日

文・写真  上富田町文化財審議委員 玉置善春