●上富田町の地名  −無形文化財としての地名

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 おわりにかえて

 地名は土地に刻まれた文化財だといわれている。しかしこの文化財も、本稿で示したように決して不変なものではない。短時間に産まれ、消滅していくものである。それを自然現象、当り前のこととして傍観するのではなく、その地名には位置を示すだけでなく、その位置の特徴を示したメッセージが含まれていることを認識したい。また地名を変えることでその先人たちの発しつづけているメッセージがなくなってしまうこともあわせて知ることが大切である。先人たちの生き様が地名に刻まれていることもあって、当時の庶民の生活史の発掘、城下町、寺域等を復元できたり、ロマンに夢がふくらむことも多い。また先人のせっかくのメッセージをしらなかったために危険にさらされることさえある。とくにハギやハケ、クレ、クワ、クエ、フケ、ウメ等崩壊地名、危険地名といわれているところに家を建てるときは、建築基準法以上の基礎をうたなければ、災害に遭ってしまう恐れのあることも熟知しておくことが大切である。先人たちのメッセージを生かすことが出来ないとなれば、地名の役割が半減してしまうことになる。したがって消えていく地名を最小限に食い止める努力が我々に求められているし、その責務を遂行するためには、地名の大切さを知り、先人たちの情報をつかもうとする真摯な姿勢と精進が必要となろう。