●富田川の魚  

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まとめ

 一部に「遡上魚に与えるえん堤の影響」を通して富田川の本流の魚の動きをみていき、二部では「富田川の支流と本流の魚」を通して各支流と本流の1箇所の各魚種の生息状況を見ていった。

 本流には高さ1mから11mのえん堤が5箇所(図1)にあり、さらに、支流には大小多数のえん堤(図2)がある。本流の遡上する魚の動きを見ていく。それぞれのえん堤を遡上するウナギ、アユ、アマゴ、各種のハゼ類が上り下りしている。遡上魚にとって各えん堤を上り下りすることは困難である。今回の調べで明らかになってきたこととして、1)ウナギ、ボウズハゼ、オオヨシノボリ、ルリヨシノボリなど遡上性の強い魚は最上流域まで分布しているもののえん堤ごとに急激に生息個体数を減少させている。2)ゴクラクハゼ、カマキリ(アユカケ)などの遡上性の弱い魚種は低い(1m〜2m)えん堤でさえもほとんど遡上できないでいる。遡上性の強い魚種であれ遡上性の弱い魚種であれいずれも不自然な分布になっている。続いて各支流における川魚の生息状況を見ていく。8箇所の支流(図1)には高さ1mから5mの多数のえん堤があり、しかもこれらえん堤は遡上魚にとって遡上不可能な構造をしているため各支流には両側回遊魚がほとんど生息していない。各支流ではほとんどの魚がその周辺で一生を過ごす淡水魚で占められている。以上の状況から富田川全体に渡ってみれば、両側回遊魚が生息できるのは主に本流である。このようにゆがめられた姿が現在の富田川の魚である。