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 粥占い(かゆうらない)  

粥占い

粥占い

 生馬の鳥渕にある地主神社では、一月五日(もとは旧暦十一月二十三日)に粥占いの行事がおこなわれる。社殿の前にすえた大きな釜で小豆粥を炊いて、その中へ長さ八、九センチ位の細竹を二つ割りにして入れておき、竹の溝につまった米粒の量で、稲その他の農作物の豊凶を占うのである。品種名は錐(きり)などで竹に書いておき、神殿に供えてから粥の中へ入れる。粥が煮えてから竹筒を取り出し、調べた結果は品種ごとに上・中・下に分けて発表される。

 占いのすんだあとの小豆粥は、参列した者がいただいて、その場で食べるならわしがある。小豆粥の材料の米と小豆は、当番にあたった家が出し、水は境内にわき出ているのを使い、薪は神社内の枯木などを平素保存しておいて、それを燃やすことになっている。

 この地主神社は、その名前からして古くから祀られていた土地固有の神社であろうが、祭神はいつからか稲荷神だとされていて、稲作とは関係があることになる。ここでの粥占いは、もともとは地域の講の人々の間で行われていたものである。それが、昭和五十六年ごろ関係者が少し宣伝したことから、近辺の人々も見に来るようになり、更にテレビで放映されたりして、かなり広く知られるようになった。毎年のように新聞などでも紹介され、平成二十年の場合は、豊作物二十九品種について占われ、そのうち二十種が豊作の「上」であったと報ぜられている。

 一般には粥占いは旧一月十五日の小正月に行われるところが多く、県内では和歌山市の伊太祁曽いたきそ神社、橋本市の隅田すだ八幡神社、日高川町の寒川神社などが知られている。田辺市稲成の稲荷神社では初午の日に行われ、ここもいまなお多くの品種について占われる。鮎川の住吉神社でも戦前は行われていたが、戦後になって中止になった。