●上富田町の年中行事  

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 サギッチョ

サギッチョ(どんど焼)

 正月十五日にしめ縄や門松などのお飾りを集めて焼くのを、サギチョウ(左義長)とかドンドとか言うのは、全国的なことであって、珍しいことではなく、上富田でも同様で、こうしたことばも使われていた。

 昭和五十三年に実施された緊急民俗文化財調査報告書の岩崎の分には、「しめ縄や門松などの正月のお飾りを地区で川原の一か所に集めて焼いた。その残り火で餅を焼いて食べると無病息災だといわれる。この行事をサギッチョという」としている。

 『生馬郷土史』(小学校百年史)には、ドンドとして、「正月に飾った門松、しめ飾りを近隣持ち寄って川原で燃やした。これを、おかざりをはやす、ドンドを焚く、といった。この火の中に餅を投げいれて焼き、これを皆で分けて食べると病気にかからない、と言われている」とある。

 全く同じようなことをする行事であるのに、岩崎ではサギッチョ、生馬でドンドという。これを少し広げた地域でみると、朝来や富田方面、田辺の町中などではサギチョウ、磯間や中芳養、秋津川などではドンド焼きである。こうした例からして、この地方では、サギチョウ(サギッチョ)とドンドが混在していることになるが、識者は別として、行事の主体である子供たちは、どちらか一方の呼び名を知っていて、おそらく他の一方の呼び名は知らなかったと思われる。

 左義長は、平安時代に宮廷などで行われていて、もとは小正月に古書を焼く儀式であったというが、それが民間ではお飾り類を焼くことに変わっていき、左義長の意義などわからず、子供たちはサギッチョとなまり、また、どんどん火を燃やすことから、子供ことばとしてドンドも生まれてきたのであろう。

サギッチョ(どんど焼)